【NPSの本質】NPSの指標特性とそのマーケッティング分野への応用について解説

【NPSの本質】NPSの指標特性とそのマーケッティング分野への応用について解説

更新日:2024/11/20

NPS(ネットプロモータースコア)は、顧客満足度に代わる経営指標として注目されています。従来の満足度指標では消費行動への影響が少ないとされる一方、NPSは顧客ロイヤルティを可視化しやすく、SNSでの推薦や売上増加に繋がりやすい特徴があります。企業や大学マーケティングでも、NPSを用いた分析により、顧客体験や改善ポイントが把握でき、施策の最適化が可能となります。

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最近、SNSの領域でもNPSという用語を聞くことはないでしょうか。
顧客満足度という指標に代わる、あらたな経営指標としても注目されています。
 
従来の顧客満足度では、実際の応用分野において必ずしも、顧客ロイヤルティなどのコアとなる消費行動にはあまり関連しないという報告もあります。これに対して、NPS指標ではマーケッティング分野において、いろいろな応用例が考えられ、今後の発展が期待されます。
 
本記事では、NPSの本質について、その理論や応用範囲について総合的に解説します。


NPSとはどのような指標か?

経営指標などでも利用されることのある、NPSの本質やその収集方法や計算法についてまず理解しておきましょう。
 

NPSの本質

NPSの本質とは、どのようなものでしょうか。
NPSとは、顧客ロイヤルティを測る指標として、米国系企業などで開発されたものです。
収集されたデータが数値化されることにより、後で述べますが、いわゆる多変量解析の手法が使用できるという、大きなメリットがあります。
 
NPSが高いということは、製品やサービスを推奨してくれるファンが多いということになるのです。このような推奨者は、製品やサービスを多く購入し、良い顧客であり続けてくれ、SNS上での押しの状態にあるともいえます。またSNSで使い勝手が良いとか、コスパが抜群といった、ポジティブなクチコミも広めてくれます。直接的にも間接的にも企業の売上向上など、業績にポジティブな影響を与えることにもつながります。いわゆるデジタル・メディアにも、よい影響を与えることができるのです(下図参照)。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bbt/6/2/6_55/_pdf/-char/ja



NPS指標を用いると、データ分析において数量化1類(量的な解析)と数量化2類(定性的な質の解析)の両方の使用が可能となり、顧客ロイヤルティを縦横に理解することが可能です。特に、定性的な質の解析が使えることは、顧客ロイヤルティの形成過程などを理解する上で、非常に助けになります。
なかなかデータとして捉えることが難しい、顧客関連の指標データをすぐ解析することができ、SNSの領域などの大規模なデータの把握の手法としても貢献します。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bbt/6/2/6_55/_pdf/-char/ja
NPSと事業の成長率に高い相関関係があることを証明する多くの調査結果があります。ほとんどの業界においてNPS指標が高い企業では、競合より大きな成長率を上げているというデータも報告されています。
必ずしも企業収益との相関が高くはない顧客満足度とは異なり、NPSのデータは、企業の収益との相関が強い点から、米国のみならず日本企業でも、経営指標としての導入が進んでいます。


NPSに関する、sikiapiコラム記事

NPSとはどのようなものか、その内容について理解するうえで、Instagram/LINEに特化したsikiapiの解説コラムも大変役立ちます。
sikiapiでは、InstagramとLINEのオートメーションツールを提供しています。インスタやLINEにおいて、カスタマーエクスペリエンスを大切にしたいと思っている人には便利なツールです。
sikiapiホームページ:https://sikiapi.com/articles


sikiapiでは、次に紹介する記事で、NPSの本質の一端を解説しています。
NPSとは、ユーザーが企業へどれだけ愛着や信頼感を持っているのか、顧客ロイヤリティを測るための指標になります(途中省略)。 
顧客ロイヤリティを評価するためにはNPSを指標として考えるのが基本です。NPSが高いほど商品やサービスに信頼を置いている顧客が多いということになります。
しかし、日本の評価では5点前後に集中しやすい傾向があるので、スコアがシビアになっていることは理解しておきましょう。
また、リピート率の高さも顧客ロイヤリティの高さと比例するので指標として用いることができます。」
引用資料:CEMとは?おすすめのCEMツールを紹介【ロイヤルカスタマー獲得】https://sikiapi.com/articles/vej88hq4latf



次にNPS指標について、顧客満足度と比較しながら解説します。
NPSを測定するには、顧客満足度の場合と同様にアンケート調査を行います。製品・サービス改善点を見出すために、顧客の声の活用が、顧客体験の改善に直結することになります。こちらについても、先ほどのsikiapiの紹介記事が役立ちます(下記抜粋)。
「NPSに似ている指標で満足度調査がありますが、満足度を聞く場合は大きな不満がなければ「満足している」という回答をする利用者が多いので、正確な評価は得られません。
しかし、NPSでは他人にすすめられるかを聞く調査であり、0から10の11段階評価となっているので、ユーザーは回答の責任感や明確さからより正確に回答できるようになります。
これによって、従来の顧客満足度調査よりも精度の高い評価が得られるようになります。
NPSの評価では6点以下が「批判者」、7〜8点が「中立者」、9点以上が「推奨者」となるので、9点以上を増やすことを目標にすると良いでしょう。」

NPSの測定・計算方法

顧客満足度より信頼性が高いNPS指標ですが、NPSの測定・計算方法についてまとめておきましょう。
NPSを測定するには、「あなたはこの企業(製品/サービス/ブランド)を友人や同僚に薦める可能性は、どのくらいありますか?」という質問を行い、0~10の11段階で評価をしてもらいます。
https://www.nttcoms.com/service/nps/summary/

NPS指標の計算方法は、下記のようになります。9~10点を付けた顧客を「推奨者」、7~8点を「中立者」、0~6点を「批判者」と分類し、回答者全体に占める推奨者の割合(%)から、批判者の割合(%)を引いて出てきた数値が、NPSの値となります。
NPSの計算方法は、「(推奨者数-批判者数)/(回答者総数)×100」です。たとえば、10人の回答のうち「9~10」の推奨者が6人で「0~6」の批判者が4人だった場合、NPSは60-40で「+20」が計算値となります。

NPSのマーケティングへの応用

経営指標であるNPSは、企業経営において必要不可欠なマーケッティング分野への応用が可能です。
ここでは、NPS指標の応用において、業界分析の手法や、マーケッティング分野への応用例について解説し、さらには昨今問題となっている大学マーケティングへの展開についてもまとめました。


NPSに基づく業界分析の手法

NPS調査の結果分析において、数量化1類(量的な解析)と数量化2類(定性的な質の解析)の両方が可能となり、顧客ロイヤルティを縦横に理解することが可能です。特に、定性的な質の解析が使えることは、顧客ロイヤルティの形成過程などを理解する上で、非常に助けになります。 
NPS調査は、企業の業務改善やサービス改善の成果を相対的・数値的に把握できるものになっています。また自社が業界内でどのポジションにいるのか、競合他社と比較してどのように顧客に認識されているのか、理解するにはよい材料となります。
 
近年のデータドリブン・マーケティングで用いられる分析手法を、分析目的と合わせて解析します。顧客ロイヤルティの分析評価においても、多変量解析や因子分析、コンジョイント分析等の分析手法などが、顧客分類や市場分析、商品分析、価格分析といったビジネス戦略においても深くかかわっています。



https://www.jstage.jst.go.jp/article/bbt/6/2/6_55/_pdf/-char/ja
NPS調査では各製品やサービスにおけるスコアだけではなく、推奨者が売上に関連する数値にもたらす影響についても検討が可能となります。
推奨度が高い人ほどサービスの継続意向も高い傾向にあったり、また、年間の購入回数、購入金額が高い傾向も確認できます。
たとえば顧客満足度CSIや、顧客ロイヤルティの相関関係は、次のようになります。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/bbt/6/2/6_55/_pdf/-char/ja

NPSへのマーケティング分野への応用

NPS指標をもとにすると、ユーザーの体験や感情をもとに、顧客ロイヤルティから生じる効果を可視化することも可能となります。sikiapiの記事でも、この点を強調しています(下記参照)。
「ユーザーの体験や感情に焦点を当てたマーケティングなので、施策に効果があるのかデータを用いて可視化することが重要となります。
例えば、「クーポンの配布により商品がお得になった」「webシステムを改善しサイトが便利になった」などのシンプルな施策だと効果を実感しやすいです。
しかし、複数の施策が組み合わさったものだと、効果を感じにくくなってしまうことが多いです。
売上を可視化データとしてあらかじめ指標を設定しておくことで、その後のPDCAサイクルを最適化し、施策を改善することができます。
また、最初は特定の領域でシンプルな施策を進めていき、効果が見られてから少しずつ施策の範囲を広げていくと良いでしょう。」
https://sikiapi.com/articles/vej88hq4latf
NPS指標については、マーケッティング分野ではふたつの評価法があります。
ひとつは、顧客が対象となる利用体験をした直後に、調査を実施・評価するものです。
具体的には、顧客が店舗で商品を購入したり、サービスを利用したり、Webサイトから情報を取得したりなど、それぞれの体験を体験直後に評価します。 この調査では、顧客の体験を正確に把握することができ、提供するブランドやサービスの課題発見を可能にします。
もう一つは、自社ブランドに対する顧客の体験全体を評価するものです。
顧客は、1年間を通して商品の購入や問い合わせ、周囲の評価との照らし合わせなど自社ブランドと直接的・間接的な接点を持っています。この際、体験時の満足度も一緒に調査することで、どのような体験が顧客にとって重要だったのかを分析することが可能になります。この調査は、複数のブランド体験を総体として評価するため、年に1、2回の実施が推奨されています。



ポートフォリオ分析は、顧客満足度などのデータから、重点改善領域を抽出する分析手法です(下表を参照)。当然、NPS指標についても同様な分析が可能となります。
満足度を構成する「各要素の満足度」を縦軸、総合満足度と各要素ごとの満足度の相関係 数(関係の強さ)を横軸にとり、各要素をプロットして重点的に改善する要素を明らかにする。 「総合満足度への影響度」と「個別項目の満足度」をプロットすることで、改善点(総合満足度 への影響度は高いが、個別項目の満足度が低い項目)の抽出を行うことができ、改善施策立案や優先順位付けの資料とすることができます。


https://www.jstage.jst.go.jp/article/bbt/6/2/6_55/_pdf/-char/ja

NPSの大学マーケティングへの展開

NPSは、大学マーケティング分野への展開においても注目されています。
 
近年の少子高齢化などの影響もあり、大学のマーケティングが大きく変貌しています。
特に、入学者数の維持・増加は、当該大学の生き残りに大きく影響します。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bbt/6/2/6_55/_pdf/-char/ja


大学マーケティングは、データを活用することで各種のマーケティング施策の立案や成否に影響を与えるとともに、各種課題の解決に役立つことが期待されます。またこれらマーケティング活動で得た定性・定量情報を学習効果測定に活用することで、より正確な結果導出に貢献するとしています。
 
大学マーケティングにおいて、マーケティング戦略立案の際に生じる課題となる、
「入学者数をターゲット」としたとき、

  1. 本学の学生の特徴は、他大学と比べてどのように違うのか(何を魅力に本学を選んだか)
  2. 決定的な大学選択要因の第1と第2、第3の距離はどのくらいあるのか。第2の重要要因を第1にするには、何をすればよいか
  3. 高校生へはどのようなメッセージが効くのか
  4. (1)何を学ぶことができるのか、(2)卒業時に どのような職業につけるのか
  5. 入学者のエリア拡大をもたらすにはどのような取り組みが必要か
  6. どのような媒体や広告がどのような属性に重要なのか
  7. 大学の立地が郊外である場合、それはどの程度ハンデか
  8. 需要の価格弾力性はどの程度か
  9. 本学の魅力は適切に伝わっているか、確認する方法や伝える方法はあるか

などの、記述式アンケート等から得た定性情報が得られます。

記述式アンケート結果の多変量解析を行うことにより、NPS指標などのデータの大学マーケティング領域への応用が、今後も期待されます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bbt/6/2/6_55/_pdf/-char/ja


まとめ

顧客ロイヤルティにかかわるNPS指標について、基礎から応用範囲まで解説しました。
 
SNSの領域においても、NPSはあらたな指標として活用できる余地があるといえます。
従来の顧客満足度に代わる、あらたな経営指標としても注目されており、今後の応用範囲にも期待ができます。また顧客満足度でも同じですが、NPS指標においても多変量解析から派生した解析手法が適用できます。ポートフォリオ分析などを通じて、NPSから得られたデータをさらに有効に利用することが可能です。
 
本記事が、NPS指標というあらたな風をSNSの領域にも適用してみようという方々のお役に立てば幸いです。

sikiapi(シキアピ)

sikiapi(シキアピ)

sikiapi(シキアピ)は、シナリオ型のチャットボットを活用し、対話型マーケティングで企業のInstagram・LINE公式アカウント運用を支援するツールです。
セグメント配信、シナリオ配信、自動応答機能などで顧客一人ひとりにカテゴライズされたマーケティングが可能となります。AIのようにその場で会話を考えていく機能はありませんが、シナリオ型のチャットボットのメリットを最大限に活かしているため、質の高いサービスを顧客一人ひとりにカスタマイズして届けることができます。
また、sikiapiはシナリオ型チャットボットを作成する上で、プログラミングなどの特殊な技能は必要ありません。直感的な操作でチャットボットを作ることができることも大きな魅力の一つとなっています。

項目内容

サービス名

sikiapi

会社名

株式会社Enigol

公式サイト

https://sikiapi.com/

柳沢智紀
この記事の監修者
柳沢智紀
株式会社Enigol

株式会社リクルートホールディングスでWEBマーケティング業務および事業開発を経験し、アメリカの決済会社であるPayPalにて新規事業領域のStrategic Growth Managerを担当の後、株式会社Enigolを創業。対話型マーケティングによる顧客育成から売上げアップを実現するsikiapiを開発。