更新日:2023/06/28
「AI(人工知能)」や「チャットボット」。 チャットボットというと「AIと話せるもの」と感じてしまいがちですが、実は違います。この2つはまったく違うものなのです。 今回は、そんなAIとチャットボットの違いを深掘りし、さらに近年ビジネスの場面で注目を集めている「チャットボット」についてご紹介していきます。
チャットボットとは、「チャット」とロボットの「ボット」をかけ合わせた言葉で、主にWEBサイトの「ユーザーインターフェース」(UI)などに使われるサービスです。
企業サイトを訪れたとき、画面下にFAQ(よくある質問対応)の吹き出しを見たことがある人も多いのではないでしょうか。
ユーザーが検索画面に入力した文字や音声から特定のキーワードを拾い上げたり、ユーザーに選択肢を選ばせたりして、決まった質問に答えてくれるのが「チャットボット」の特徴です。
このようなチャットボットのプログラムを「人工無脳」といいます。
プログラムや人工無脳と聞くとたいへん難しく感じますが、このようなチャットボットは、今やいたるところに使われており、私たちの生活に自然に溶け込んでいます。
身近なSNSであるインスタグラムやLINEにもチャットボットが使われており、これまで困ったときにはサポートセンターに問い合わせていたことでも、チャットボットが気軽に対応してくれるようになりました。
このようなチャットボットには主に3つの種類があります。
ユーザーに質問を重ね、「Yes」か「No」または「設定した選択肢」を選んでもらい、ユーザーに答えを提供するのが「シナリオ型・ルールベース型」のチャットボットです。
選択肢に組み込まれていない質問に答えることはできませんが、事前にたくさんの選択肢を用意しておくことで、様々なユーザーの悩みに答えることができます。
よくある質問やFAQの対応に向いており、まずチャットボットを通してからスタッフ対応するなどの活用が見込めます。
ハッシュ型とは、ユーザーが入力した「キーワード」とチャットボットにあらかじめ入力したデータを照らし合わせ、決まった答えを返すチャットボットです。
登録した「キーワード」や「単語」のデータが増えれば増えるほど、対応できるパターンが増えていくのが特徴です。
AIを搭載したチャットボットです。
会話の流れを自動で記録・学習していきます。自然言語処理によって、より人間的なコミュニケーションを可能とするのがAI搭載型のチャットボットの特徴です。
「おすすめ/オススメ」などのひらがなとカタカナの違い、ほぼ同じ意味である「美しい/キレイ」といった「表記ゆれ」に対応し、顧客と対話して学習を重ねるほど、より精度の高い答えを提供することができます。
AIは、「Artificial Intelligence」の略で日本語で人工知能を意味します。
AIはたくさんのデータを蓄積し、学習したデータに基づき、予測や判別が可能です。
2012年にGoogle社が発表した「機械学習による猫の判別実験」で、「AIが人に教わることなく、どういったものが猫であるかを理解した」という研究結果が出され、世界的なニュースとなりました。
AIは決まった質問に対応するだけでなく、学習によって自発的に発展していきます。複雑な状況・言葉の「意味」、物の「色・形」などを理解し、自ら「答え」を出せるのがAIの特徴です。
そのAIにも、実行する処理によって種類が違います。
画像や音声のデータを取り込み、対象物を判別することができるのが「識別型AI」の特徴です。
先ほど例にあげた「猫の判別実験」のように、画像データに何が映っているかを判別し、それを上手く仕分けすることができます。
音声データをテキストに変換したり、音楽データをポップ・ジャズ・演歌などに分類することも可能です。
この識別型AIを使うことによって、出荷前に不良品を取り除いたり、動物の健康状態を観察して、体調の良し悪しを判別することもできます。
予測型AIは蓄積したデータから、将来を推測するのに役立ちます。
会社の売上予想や成長率を計算したり、資金のショートなどのあらかじめ起こりうるリスクを事前に教えてくれるのが「予測型AI」の特徴です。
その他にも、予測型AIのよくある事例として、ECサイトでユーザーが興味を持ちそうな商品を予想してサジェストしたり、仕事や転職で相性の良い人を探すマッチングサービスにも使われています。
実行型AIは、人間の代わりに働いてくれるプログラム型ロボットです。
近年話題となったキーワードを入力すると自動でイラストを合成するAIや、同じ人物が描いたイラストを読み込むことで、その人物が描いた絵の特徴(例えばゴッホのような独特の筆タッチの絵など)を持つイラストを新たにつくることができます。
他にもキャッチコピーの作成や自動作曲から、将来的にはAIによる車の運転までできるようになるといわれています。
AIによる対話型システム市場は今後ますます拡大し、2027年には156億米ドル到達すると予測されております。(※)
どうしてここまでチャットボットが注目されているのか、具体的な活用例とメリットを紹介します。
<出典>(※)株式会社グローバルインフォメーション
チャットボットの活用例のひとつとして、総務や人事部・経理担当の最初の窓口「社内ヘルプデスク」として利用されているケースが多く見られます。
担当者不在のケースや人手がたりない部署への問い合わせに、まずチャットボットが対応することで、担当者から確認を取れるまで作業が進められないなどのムダを省くことができます。
社員ひとりひとりの問題の自己解決をうながし、各部署の業務効率化を後押しすることが可能なのです。
もう一つのチャットボットの活用例として、よく見られるのが「カスタマーサポート」としての利用です。
これまでのコールセンターでの対応には、スタッフが応対できる件数にどうしても限りがありました。ユーザー側も、困っているときに電話がつながらない、時間外などでカスタマーセンターに問い合わせができないなどのケースがよく見られました。
しかしチャットボットを使えば、そのようなFAQ(よくある質問)への対応を、24時間年中無休かつ顧客を待たせることなく行うことができます。
チャットボットを導入することで、DM欄で自動返信ができるようになり、マーケティング業務の効率化が可能になります。
「ステップメール」のように毎日少しずつ情報配信することも可能ですし、特定の顧客のみにターゲットを絞って商品案内をすることもできます。
年齢や性別などより詳しくパーソナライズをすることにより、CVRの向上効果が期待できるでしょう。
少子化による人手不足や、働き方改革によるワーク・ライフ・バランスの見直しなど、現在私たちは少人数でかつより生産性の高い働きを求められています。
そのような現場で、チャットボットを導入するメリットはより高まっています。
とくにFAQ(よくある質問)への対応がほぼなくなるので、長期的な省人化と「コストカット」が見込めます。
サイトにアクセスし、すぐにチャットボットの方からユーザーにヒアリングすることにより、顧客がサイトを探し回って目当てのものが見つからずに離脱する確率を抑えられます。
対応の遅れは競合他社への顧客流出といった機会損失になりかねません。チャットボットが即座に返答できれば、このような事態を未然に防ぐことができます。
SNSマーケティングでもチャットボットが活用されています。
このチャットボットは主に「集客」「情報収集」「顧客に合わせたリコメンド」を人間に代わって行ってくれます。ここでは、チャットボットをSNSマーケティングで使う際に期待できる3つの機能をご紹介します。
まずはTwitterやインスタグラムなどで「集客用の投稿」をします。
前もって予約したコンテンツを自動的に投稿することにより、スタッフの負担を減らすことができます。投稿する内容を自動作成してくれるチャットボットもあり、単調なつぶやきではなく、よりバリエーション豊かな投稿をするものもあります。
もしユーザーが投稿内容に興味を持ち、フォローを申請した場合、自動でフォローバックをしたりDM自動返信を行うこともできます。
顧客のデータを収集し、蓄積・分析してユーザーのニーズに合わせたおすすめ商品を紹介することができます。
キャンペーンや新商品をリコメンドしたときには、ユーザーがその商品に興味を持ってくれたか、どの情報を見たのかもエンゲージメントを確認することができます。
他にも、チャットボットを使って顧客にアンケートを実施することも可能です。入手した情報によってシナリオ型チャットボットの選択肢を増やしたり、適切な答えを提供することができます。
また、あまりにもユーザーに興味のないものを推奨しても、「ブロック」や「フォロー解除」に繋がり、顧客が流出してしまいます。しかし、AIによる自動学習を使えば、ユーザーの好みに合わせ、次回以降はエンゲージメントが低いものをおすすめしないなどの配慮が可能となります。その結果、ユーザーが本当に興味のあるものだけをレコメンドし、成約率を上げることが期待できます。
sikiapiは、「株式会社Enigol / Enigol Inc.」が提供しているInstagramのチャットボットツールで、1体1のコミュニケーションや顧客の属性別管理などに適しています。
顧客が増加して多くのユーザーからDMなどでメッセージをもらうようになってくると、全てのメッセージに対応することが難しくなります。
sikiapiでは、定型文を作成して自動応答する機能や顧客の属性などを管理・分析しサポートするなどのさまざまなサービスが充実していので、運用に必要なリソースを確保することが可能です。そのため、リピーターの獲得やユーザーのニーズに適した配信やコンテンツ提供が行えます。
参照:https://sikiapi.com/instagram
チャットボットはあらかじめ決まった形式の答えしか提示することができません。
そのため、AI非搭載でのチャットボットでは、「こんにちは」「気分はどうですか?」などと聞いても、それが人間の挨拶と判別できません。
コミュニケーションを主軸としたきめ細やかなサービスには対応できず、会話やヒアリングがそこで止まってしまうのです。
このようなケースに対応するには、膨大なデータを入力するか、人間のスタッフにつなぎシステムを切り替えることが有効です。
さきほどの解説にもありましたが、チャットボットはコミュニケーションが苦手です。
声のトーンや言い方などで相手の気持ちなどを汲み取ることが苦手なので、顧客が怒っているのかそうでないのか判断できず、クレームに対しても形式的な答えしか提示できないケースがあります。
そのため、かえって顧客の不満が増える可能性を考えなければいけません。チャットボット導入時には、このようなクレーム処理を初期の段階で判別し、担当スタッフによるサポートに移行させる必要があります。
チャットボットは新たにデータを追加したり、調整を行うなどメンテナンスがかかせません。チャットボットは売り切り型の商品が多く、このようなアップデート・メンテナンスのオプションを含めますと、別途料金がかかってしまうこともあります。
自社で開発・カスタマイズできるのであればコストは安く抑えられることもありますが、外注で頼むとなると、毎月調整のための費用がかさんでしまいます。
どんなに高度なAI型チャットボットでも対応できないものがあります。
考えられるものの一例として、顧客とチャットボットはパソコンやスマートフォン・タブレット、ネット回線を通じて会話をしますので、電子機器本体に異常があったりネットワーク自体に問題があったりすると、チャットボットだけでは異変に気づきにくく、対応をするのは難しくなります。
チャットボットは、まだ専門的な分野への応用は難しいとされています。
たとえばAIによる医師の診察代理は、患者の持病や年齢・性別、病気の進行度によって臨機応変な処置が求められます。とくに緊急性の高いものなど、不測の事態への対応にはまだ人間のほうが優れています。
病院内受付や診察室への案内といった内容であればチャットボットでも十分ですが、より専門的な分野への問い合わせには人のちからが必要です。
チャットボットとAIの違いは、主に人工知能による自動学習機能です。
AI型は手動によるアップデートはあまり必要はありませんが、非AI搭載型は、新しい機能を追加する際にどうしてもメンテナンス費用がかかってしまいます。
初期費用に関してはAI型のほうがかなり割高となっており、初期費用から見る導入の気軽さにおいては、非搭載チャットボットに軍配があがるでしょう。
ユーザーからの問い合わせの件数が100件以上ある場合は、AI型チャットボットの使用を検討してもいいかもしれません。30〜50件ほどで収まっているのであれば、通常のチャットボットでも十分応対可能です。
どんなに性能が高く評判のチャットボットであっても、実際に導入してみないことには自社のサイトにマッチできているか確認することはできません。そのため、サービスを導入する前には必ず、無料もしくは低価格のトライアルがあるモノを選びましょう。
トライアル中に管理のしやすさ・ユーザー満足度・使いやすさをテストし、しっかりと確認しておくことがチャットボット導入で失敗しないポイントです。
チャットボットは売り切りのモノが多く、場合によってはアフターサービスがないものもあります。いかに導入が難しいツールでなくても、サイトに設置するさい迷ってしまうケースが多々あります。
そんなときに、電話やチャットですぐに聞けるサポート体制があるととても便利です。
ただ質問に答えてくれるだけでなく、設置後のアフターケアや、導入前にやるべきことを自社のエンジニアと相談したりしてくれるなど、積極的なサポートをしてくれるかもチェックしてみましょう。
ユーザーとチャットボットは直接対話をしますから、企業サイト・顧客の両方をガードするためにも万全のセキュリティ対策が求められます。
チャットボット導入前に、どのようなセキュリティ対策がしてあるかをチェックしましょう。
チャットボットにはAI搭載型と非搭載の2種類があります。
今後はAI搭載型チャットボットも増え、様々なシーンでの活躍が見込まれています。
決められた答えしかできない非搭載チャットボットであっても、適切に使用すればスタッフの負担を減らし、人件費の削減や顧客満足度を高める効果が期待できるでしょう。
どちらを利用すべきかは「チャットボットを導入する目的」によります。
毎日顧客対応に追われている、社内トラブルの対応が遅れて業務が進まない、SNSマーケティングまで手がまわらないなどのお悩みをお持ちでしたら、チャットボットの導入をおすすめします。
株式会社リクルートホールディングスでWEBマーケティング業務および事業開発を経験し、アメリカの決済会社であるPayPalにて新規事業領域のStrategic Growth Managerを担当の後、株式会社Enigolを創業。対話型マーケティングによる顧客育成から売上げアップを実現するsikiapiを開発。