【チャットボットの未来】そのAI連携と進化について解説

【チャットボットの未来】そのAI連携と進化について解説

更新日:2024/09/25

最近特に、AIやその理論である、深層学習についての関心が高まっています。 従来からあるチャットボットも、AIの深化の影響を受けて、改善や改良がすすんでいます。 AIブーム等により、その理論はわからなくても知識を利用できればよい、というような考え方もあります。ただ最先端のAI開発作業は難しいとしても、その基本的内容や考え方を身に着けておけば、将来にわたっても恩恵を受けることができます。 本記事では、チャットボットについて、その現状から最新理論や応用について総合的に解説します。

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チャットボットとは何か?

コールセンターなどでも利用されることのある、チャットボットの現状についてまず理解しておきましょう。

チャットボットとは、企業のホームページなどでアプリで連動して起動するチャット型のシステムとなります。人間に代わり当該プログラムにより、質問回答を自動でリアルタイムに行うことができる自動会話プログラムのことです。このため人間では難しい、365日、24時間の稼働といった芸当も可能となり、多人数をかけることなく、本システムのみで対応が可能です

チャットボットの基本

現在のチャットボットは、AI学習されたものではなく、あらかじめ質問シーンに応じて、お客様への回答を設定しておく、シナリオ型のチャットボットとなっています。

企業や自治体などで、あらかじめ質問の多そうな項目を調べあげて、その回答を設定しておけば、自動でアンサーが出ることになり、これだけでもコールセンターなどの業務では役に立ちます。

 初期段階からお客様への対応が可能となりますが、あらかじめ設定された回答が出るだけなので、その回答がブラッシュアップされたり、場合によっては関連質問への回答は難しいことがあります。このためシナリオ型のアンサーには得意ですが、それ以外に新たな回答を考えることはできません。

AIによる学習はないので、チャットボット自身がさらに賢くなることはありません。たとえば、ある家電について、2020年の質問を収集し、ベストなアンサーが設定できたとします。これにより2020年には、この家電の情報を知る最新型のチャットボットではありますが、5年後、10年後にそれがベストであるかはわかりません。家電でしたら、毎年新製品が出るので、当該品のみの対応で十分かもしれませんが、自治体の税務などに関するアンサーを行うチャットボットでは異なります。

たとえば確定申告などで、税務について質問があったとすると、2020年度の最適アンサーは、2025年には既に最適ではありません(2023年に大幅な改正がされており、2020年度版があったとするとまったく役にたちません)。

チャットボットが広がった背景
従来型のチャットボットが広がった背景ですが、特に「自動応答ができる」ことがあげられます。

コールセンターのような365日対応の場合、無人対応が可能となるメリットがあります。但し、対応が難しい複雑な応答は、有人で対応しているのが現状です。なお簡単なアンサーの場合は自動で夜中でもいつでも聞けるので、ユーザー側にとっては聞きやすいという利点もあります。また無人のチャットボットと有人対応を組み合わせるといったことも可能で、AIチャットボットではない場合は、現在も有効な手段となっています。

よく企業のコールセンターなどに電話すると、まず定型的な質問分野を番号で選択すると関連回答が出てくるような場合があります。定型項目以外のその他項目では、オペレーターによる回答ということがよくあります。企業側の定型回答をえんえんと聞かされることになり、それだけでお客様の機嫌がわるくなる可能性もあり、ベストのシステムとはいえません。

現状のチャットボットでも、英語や主要な外国語では、自動翻訳機能がついています。このため駅や観光地での利用が多くなっているほか、最近はやりの越境ECなどの業務への利用も可能です。自動翻訳機などもありますが、この自動翻訳は現状のチャットボットでも可能な分野でもあり、インバウンド客などの大幅な増加には効果的な手法といえます。

また、お客様対応にも活躍するチャットボットですが、社内業務の効率化に特化したようなチャットボットもあります。この場合、社内業務対応に特化したシステムとして利用が可能です。特に新人研修やその業務に慣れていない人が対応する場合、社内業務の詳細を蓄積しているようなチャットボットを設置しておけば、新人でも業務の早期立上げが可能となります。

AIチャットボットへの進化

次世代型のチャットボット、特にAIドリブンのチャットボットについて、次に解説します。なお、AIドリブンとは、AIでチャットボットが動作し管理されている状態のことを示しており、次世代におけるチャットボットの主流になっています。

 AIドリブンの最新事例

AIドリブンのシステム最新事例としては、最近の都知事選があります。AI学習に精通しているある候補は、AI〇〇として、自身の公約をAI学習させ、学習した内容をもとに自動応答できるシステムを稼働*させました。
引用資料:*https://takahiroanno.com/

これにより、同システムでは、既存チャットボットでは難しかった、あらかじめ設定されていないシナリオに対しても、アンサーが出せるようになりました。このシステムでは、自身の公約自体がブラッシュアップされるので、政策立案やその改善にも利用できます。データを活用した行政を行うのが目標なら、関係省庁ではこれぐらいの活用はしてほしいものです。

 なお都知事選で、同じようにAI□□として応答するYou Tube画面を利用した候補もありましたが、これはあらかじめ設定した動画やアンサーを選択的に応答するシステムです。

 AI学習の本質とは何か?

よくAIといいますが、中身はかなり違う場合もあります。AIの本質は、学習すなわちAI学習にあります。ヒトでも2歳児ぐらいまでは、理解できても会話可能レベルではしゃべれませんが、実はその間はヒトの脳内には膨大な(且つ、自動的に)学習データをひたすら蓄積しているのです。この場合は、日本語による、当該幼児の両親や関係者(祖父母など)の会話が学習されています。その結果、ある日何かしゃべれるようになっていきます。しゃべれるようになれば、両親とまず会話して、その内容も学習され、さらに賢くなっていきます。

実は、この辺のヒト学習方法をそっくりまねたシステムを「深層学習(ディープラーニング)*」といい、AI学習の基本となっています。この学習を実行するためには、膨大なデータ収集とそれを保持・稼働させるための、コンピューターシステムが必要となります。10年前はそれらのシステムを揃えて、実際に深層学習させるのは大変なことでしたが、現在はChatGPTなど、AI学習させた活用可能なシステムがぞくぞくと誕生しています。
引用資料:*https://www.jstage.jst.go.jp/article/jrsj/33/2/333392/_article/-char/ja/

データ蓄積の本当の役割とは

ヒトの学習でもわかるように、脳内には幼児期から膨大なデータ(資料)が蓄積されていきます。この蓄積内容が、その後の学習方向を決定していくといえますが、これがAIシステムでいう「データ基盤」となるのです。

ヒトの学習の過程で、特にエポックのある事象は脳内で固定され、いわゆる強化学習されています。
大学の情報教育でも、たとえばストーリー中心型教育*として、チャットボットを積極的に使用しようという試みも行われています。
引用資料:*https://casiozaidan.org/files/pdf/038/38-46.pdf
https://axies-test.jp/_files/report/publications/papers/papers2017/TF2-5.pdf 


チャットボットとデータ基盤を連携させる試みもかなり実施されています。特に企業活動に利用する場合は、このデータ基盤をもとにチャットボットが稼働するといえます。
たとえば、チャットボットの有力な適用範囲であるお客様対応(顧客満足度)では、データ基盤を利用することにより、毎日のチャットボットでの対応が可能となります。

 インド政府では、既にチャットボットとデータ基盤を連動させて「苦情処理対応」に活かしています。日本のデジタル庁にあたる、インド固有識別番号庁(UIDAI)は、チャットボットAadhaar Mitra*を発表しています。このシステムでは、電話、電子メール、チャットボット、ウェブポータル、ソーシャルメディア、郵便物、訪問などの複数のチャネルをサポートし、苦情の申し立て、追跡、解決を効率的に行うことができるということです。なおこのシステムを利用して、同庁は公的苦情解決ランキングでインド国内で3か月連続トップとなっています。
引用資料:*https://spap.jst.go.jp/india/news/221203/topic_ni_04.html

データ基盤の裏付けのないチャットボットは、将来は生き残れないといえるでしょう。

AIチャットボットの応用範囲

ここからはAIチャットボットの応用範囲についてみてみましょう。先ほどのように、AIチャットボットとデータ基盤が連動することにより、かなりの仕事をヒトに代わって、行うことができます。

データ流通分野への応用

データ基盤のところで、データ蓄積の重要性について述べましたが、そもそもデータの収集、蓄積、整理、分析といった各段階で、AIシステムとの連動が必要です。ヒトの脳内でも、全てのデータがやみくもに蓄積されているのではなく、データの収集段階で一定のバイアスがかかっているのです。よくSNSで自分に都合のよいデータだけを拾ってあるく現象がありますが、ヒトの脳内機能の特性のひとつです。

適切なAIチャットボットでは、個人のバイアスにはまどわされることが少ないデータ収集が求められ、さらにその評価も重要となります。

業務実施ツールへの応用

企業におけるデータ基盤の中には、文書管理やスケジュール管理、各種データの収集・分析などが含まれます。このような業務において、AIチャットボットがあれば、それらの対応のかなりの部分、特に定型的な対応領域をカバーすることができます。現在のチャットボットでも、社内業務については、既存情報を中心とした新人研修などには使用可能ですが、AIチャットボットなら、定期的なアップデートは容易なので、変化する社内・社外の情報環境への適用も考えられます。また同時通訳なども大丈夫ですので、外国人との業務提携などのビジネスの場面でも、社内情報を熟知したAIチャットボットなら、自身の秘書のように優秀な存在となるでしょう。

経営コンサルタントの代わりとなる

現在、多くの企業で海外との事業提携や企業買収などの領域では、外資系コンサル会社を使用する場面がさらに多くなっています。海外の事情や当該分野を熟知しているコンサルタントは強い味方ではありますが、実際に使用してみると自社の基準や社内事情などはわかっていないので、必ずしも適切な解決案がかえってくるとは限りません。

特に日本企業は、海外事情に精通していない場合もあり、海外企業の買収が成功したといえる事例は、かなり少なくなっているのが実情です。

このような場合、自社のデータ基盤を有しているAIチャットボットならば、たとえば海外企業の情報を入力しておけば、自社事業や事業計画との整合性などは瞬時に判定が可能となります。AIチャボットは緊張することはないので、大事なビジネス判断でふつうは緊張を伴うような場面でも、適切な判断をしてくれる存在となりえます。既に、大企業ではこのような使い方をしているところも多いのではないでしょうか。

また政府レベルでの活用はまだかもしれませんが、情報大国とされるようなインテリジェンス能力の高い国では、AIチャットボットのようなAIシステムを利用しているのではないかと推察されます。

まとめ

チャットボットについて、その現状からAIチャットボットの進化までの理論と応用について説明しました。
AIに必須な深層学習法は、ヒトの脳の発達と同様なシステムをもとに進化してきました。実は深層学習の理論はまだ完全には解明されていませんが、深層学習により、ある時点で飛躍的なヒトの発達(たとえばヒトの幼児が会話できるようになるレベル)をモデルとしているのです。

今回の都知事選では、AIチャットボットレベルのシステムが実際に導入され、その効果が実証されています。このシステムでは、公約自体がブラッシュアップされるので、政策立案やその改善にも利用できます。データを活用した行政を行うのが目標なら、関係省庁ではこれぐらいの活用はしてほしいものです。

まだまだ進化する可能性のあるAIとチャットボットについて、今後も目が離せません。
本記事がみなさまの、AIチャットボットの正しい理解につながれば幸いです。

柳沢智紀
この記事の監修者
柳沢智紀
株式会社Enigol

株式会社リクルートホールディングスでWEBマーケティング業務および事業開発を経験し、アメリカの決済会社であるPayPalにて新規事業領域のStrategic Growth Managerを担当の後、株式会社Enigolを創業。対話型マーケティングによる顧客育成から売上げアップを実現するsikiapiを開発。